今の自分はもしかしたら、人生で一番追い込まれている状況にいるのかもしれない。
引退間近のこの時期に何を言ってるんだと思うかもしれないが、ほんとに何をやってもうまくいかず、結果も出ず、苦しんでいる。
現実から目を背けたくなったのは人生で初めてだ。
この時期で進路も決まらず、試合にも出場できない状況の中で、正直めちゃくちゃ焦りを感じている。
今まで小さな挫折はいっぱい経験してきた。
小学校の時に東海トレセンに落ちた時。
中学校の時に周りが日本代表に入り始めた時。
高校の時に周りがプロになった時。
いろいろな挫折を味わってきたが、それを跳ね返すことで成長してきた。
しかし、大学に入学してから四年間の間何も結果を出せずにとうとうここまできてしまった。
大学1年2年は公式戦に絡ませてもらうことが多かったが、大学3年にはBチームでほとんどの時間を過ごし、Iリーグですら前半途中交代や、ベンチ外の試合もいくつかあった。
大学四年の初めは試合に出ていたが、今は直近の3試合での出場時間は0分。
自分が嫌いになっていった。
ましてや、大好きだったサッカーも嫌いになっていった。
周りにどんどん先を越されていった。
もしかしたら自分は人生で一番大きな挫折の中にいるのかもしれない。
このまま消えていくのか。
自分との戦いに負けてしまうのか。
大きな瀬戸際に立っている。
そんな中で、ある一つの出来事が自分に勇気をくれた。
卒論のために部屋の中の資料を探していると一つの手紙があった。
それはある人からの手紙だった。
「10年後の自分へ」
ぼくは今サッカー選手になるために努力をしています。10年後にはきっとサッカー選手になっていると思います。今、ぼくが必死にやっていることはいっぱいあります。まず一つ目はサッカーのことです。毎日サッカーの練習をしていて、練習が終わってもサッカーのボールを家で使ったりしていて、とても努力しています。ぼくは、なぜそこまでするかと言うと、しょう来世界にも、しれわたるサッカー選手になるからです。もうそれを七年間やっているけど、まだしっかり努力したいと思います。ふたつ目は、勉強です。勉強はいつも頑張っています。サッカー馬鹿にはならないように、しっかり勉強もします。勉強は、毎日やっています。学校も休まずにがんばって、いっています。しっかり勉強も、がんばっていき、大学生になりたいです。三つ目はお手伝いです。お手伝いをして家族に感しゃしたいです。あと、大人になってもやさしい、大人になりたいです。四つ目は、あいさつです。あいさつをしない方がはずかしいと思ってやっています。あいさつは、しなかったら、大人の人とかは心の中で、印象が悪くなってしいます。もし、サッカーのかんとくで新しくきた人がいて、あいさつをしなかったら、試合にでれないかもしれないから、今から、あいさつをしています。あいさつをいっぱいして、とても立派なサッカー選手になっていき、活やくしていきたいです。ぼくはもちろん、サッカー選手になるのがゆめだけど、サッカーだけではなく勉強とかやさしさがある人になっていきたいです。これからは、もっともっと努力していき、大人になっても成長しつづけて、サッカーのビッグクラブからオファーもくるぐらいの選手になって、世界に名前がしれわたるぐらいのサッカー選手になってみせたいです。あと、みんなにも、やさしくしてあげられるそういう、大人になりたいです。十年後のぼくは、きっときっとすごい有名な選手になると思います。そのためには、この十年間、努力をします。もし、サッカー選手になれていなくても、このゆめをいつにたっても忘れることなく、ゆめを追ってください。きっとバルセロナに入団して、11番をつけてたたかっています。
この手紙の差出人は、10歳の自分だった。
20歳の時にもらっていたが、その時はとても読めるような精神状態じゃなくて、引き出しの奥に閉まった。
それから二年後、この手紙に書かれた一つ一つの言葉にものすごい勇気をもらえた。
この手紙は、自分が忘れてしまっていた大切なことを思い出させてくれた。
サッカーをはじめた3歳の時。その時は2個上の子達と混ざるのが怖くて、サッカーに行きたくなかった。
父親の後ろに乗って、毎日2人で自転車に乗って富士見小グランドまで通っていたこと。
ご褒美の焼き芋とココアのためにサッカーに行っていた思い出。
毎日家に帰ったら、頑張ったね!と言ってご飯やお風呂を準備してくれてる母親。
兄弟でり、仲間であり、常に自分を理解してくれる弟。
友達との遊びを断ってまで、大浜プールの駐輪場で犬のさくらと家族でサッカーの練習をした思い出。
常に自分の味方でいてくれた亡くなってしまったおばあちゃん。
自分が試合に出ても出なくても、どんなに遠いところまで応援に来てくれる、じいじ、ばあば。
自分が忘れてしまっていた大切な記憶をこの手紙は自分に思い出せてくれた。
自分にとってのサッカーを思い出させてくれた。
1人で孤独に戦っているように感じていたが、自分には家族という存在が常に背中を押してくれていた。
たった四年間上手くいかなかっただけで、自分の夢を諦めてしまうようでは、今まで頑張ってきた自分にも申し訳ないし、支えてきてくれた人にも申し訳ない。
今の自分を10歳の自分が見たらなんて言うのだろうか。
手紙の中の「もし、サッカー選手になれていなくても、このゆめをいつにたっても忘れることなく、ゆめを追ってください。」
この言葉が胸に刺さった。
どんなに可能性が低くくても、
どんなに周りに言われようと、
それで屈するようでは、清水綾馬じゃない。
自分の夢を叶えるために突き進んでいきたい。
10歳の自分との約束を守るために。